市場の合理性
ミクロ経済学では資本主義社会における市場が、合理性をもつという前提があります。
近代経済学ではレッセ・フェール、市場に任せておけば良いというのが主流でした。
前提条件
- 完全競争が成立しており、多数の売り手と買い手が存在していること。
- 売り手と買い手が合理的行動をとり、売り手は利潤の最大化を、買い手は効用の最大化をはかろうとする。
- 完全に情報が公開されている
- 参入退出の自由。つまり、起業してもいいし、廃業してもいいし、引っ越しても良いということです。
- 外部性がない、公害や環境破壊などの外部不経済はおこらない。
- 道路や国防、環境などの独占できず、価格がつけにくい公共財が存在せず、個人が占有ができる私的財のみしかもたない。
売り手や買い手は無駄な行動をとるためにそれが完全とはいえません。
現実には環境問題が発生しています。
空気は公共財です。
環境を守るためには市場メカニズムに任せるだけではいけないということになりました。
市場の失敗
市場が合理的な資源配布を保証しないことを市場の失敗といいます。
利益が上がらない公共財・公共サービスなどは、
市場で利益が上がらないため提供されず解決されません。
自由競争では、貧富の差、
つまり所得配分の不平等が発生してしまいます。。。
そのため、一般的な国の政府は、
所得の再分配を行います。
外部性の問題
外部とは何か?
外部経済(external economy)とはマーシャルが提唱した言葉です。
マーシャル・プランって言うことばをもしかしたら聞いたことがある人が居ると思いますが、
あのマーシャルではありません。
「個々の企業の努力というよりは、市場規模の成長そのものが、直接・間接的に及ぼす費用低減効果のことを言う」
とのことです。
簡単にいえば、企業や家計の経済活動が市場を経由せずに、
第3者にプラスの影響やマイナスの影響を与えること。
外部とは市場の外側という意味です。
企業が売り手、家計が買い手、
市場を経由しないで外部に経済的影響を与えることを
さしています。
外部経済とその例
外部経済は市場の外部に利益をもたらすものです。
交通機関なんかは典型的で、
その駅などの要所の周辺の発展を促します。
線路や道路ができて生活が便利になります。
あとは、
養蜂家と果樹園の関係ですね。
果樹園は花粉の経由をしてもらい、
養蜂家も蜜をわけてもらえる。
外部不経済とその例
外部不経済は市場の外部に不利益を発生させることです。
公害や環境破壊のことです。
SMCとPMC
上の図を見て下さい。
SMCはソーシャルな(社会的)限界費用曲線です。
つまり外部不経済を考慮している状態の曲線です。
ちなみに、限界費用とはあるお金のかかるモノを1個増やすごとに
どれぐらいコストが1個あたり増えるかという意味で、
個人的には限界費用を単位追加費用とよんでいます。
マージナルコストは直訳すると限界費用ですが、
原義的には限界費用じゃないですよね。
マージナルとは「これ以上分けられない」というのが原義的な意味で、
マージナルマンを境界人と言ったりしますね。
PMCはプライベートな(私的な)限界費用曲線です。
つまり、外部に迷惑をおこしている状態の曲線というわけです。
つまり、外部経済を考慮していない公害を起こしている場合の
供給曲線と需要曲線の均衡点はE1です。
外部経済を考慮した社会的負担をきちんと考慮した
供給曲線と需要曲線の均衡点はE2ですね。
ということは社会的に見ると、
E2が理想であるにもかかわらず、
現実的にはモノやサービスのやり取りがされています。
売り手にq1-q2は資源の無駄な供給量ですし、
買い手もp1-p2の額の公害への負担額を払っていません。
これが外部不経済による市場の失敗です。
ピグー税
ピグーという経済学者は
SMCとPMCの差額Tに環境税を課そうとしました。
つまり、社会的負担を税金で回収しようというものです。
コースの定理
工場周辺で喫茶店が工場を被害を受けている事案
A:工場の利益
B:喫茶店の利益
A>B | B>A | |
喫茶店に賠償請求権無 (工場権利優先) | 工場を操業 | 喫茶店が工場にAを払い、 Aを払い、工場を操業中止 |
喫茶店に賠償請求権有り (喫茶店の権利を優先) | 工場が喫茶店にBを払い、 工場を操業 | 工場操業中止 |
図のように、A>Bのときは工場は操業を継続して、
B>Aのときは工場は操業を中止します。
つまり、工場の売上と喫茶店の売上のどちらが大きいかで、
工場の操業が続くか続かないかが決まります。
ということは、
請求権などの権利の所有にかかわらず
市場の働きにより、結果は同じになると
コースは主張しています。
コースは外部不経済の内部化を提案しました。
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